第12回 子どもの「栄養格差」を縮小させる学校給食
夏休みの学校給食は弁当として持ち帰らせるべき

2020年10月3日

こんにちは。小島正美です。きょうは、コロナの影響で注目された「学校給食と子供たちの栄養格差」に関する話をします。
ママ美 私も子育て経験があるから、いったいどんな話か興味がわきます。

正美 コロナの影響で全国の大半の学校が休校になり、それにともなって今年3月~5月まで多くの地域で学校給食が停止になりましたね。その結果、子供たちは自宅でお昼を食べる生活が長く続きました。そのことが子供たちの栄養格差を広げたのでは、というのが今日の話のポイントです。

ママ美 なぜ、栄養格差が広がるんでしょうか。

正美 もちろん、格差が広がったという調査結果が出たわけではありません。過去の調査から推定すると、そういう格差が生じたのではと推定されるのです。

ママ美 そんな調査があるんですね。

正美 はい。有名な調査としては、朝倉敬子さん(東邦大学医学部)らが2016年に公表した調査があります。
小学3、5年と中学2年を対象に給食のある日とない日の食事を調べたところ、給食のない日は脂質や食塩の摂取過剰、食物繊維やビタミン類の不足が見られました。
日本スポーツ振興センターが行った調査でも、学校給食のない日はカルシウム、鉄、ビタミン類、食物繊維が不足することが分かっています。家庭の食事は家庭の事情によってさまざまですから、学校給食のようなバランスのよい食事にはなっていないということですね。

所得の高い家庭のほうが野菜・果物の摂取量が多い

ママ美 確かにそういう面はあるでしょうね。

正美 子供たちの栄養摂取と家庭環境を調べた調査もあります。
近藤尚己・東京大学大学院医学系研究科准教授(社会疫学)らは、首都圏の4都市に住む小学生719人を対象に家庭の社会経済状況と野菜・果物の摂取量の関連を調べました。
それによると、所得の高い家庭ほど果物の摂取量が多く、さらに母親の学歴が高いほど子供の野菜摂取量が多いことが分かりました。子供の栄養状態が家庭の経済的な裕福度に左右されるという悲しい現象ですが、これが現実です。
一方、学校給食ではどの子も同じ量の野菜や果物を食べるので、いうまでもなく、親の学歴や所得には左右されません。そういう観点で見ると、学校給食には子供たちの野菜・果物の摂取量の格差を縮小させる効果があるということです。

ママ美 私の経験からいっても、学校給食が親の弁当をつくる負担を軽くしている面はとても実感できていました。しかし、まさか子供の栄養格差を縮めていたことまでは考えが及ばず、改めて学校給食の重要性を認識しました。

正美 確かにそうですよね。各種の調査結果から、学校給食は1日でも多くあったほうがよいということを実感しますね。もっとおもしろい調査もありますよ。

ママ美 ええ、何でしょうか。

給食の差は50年後の食生活にも影響か

正美 それは柳奈津代さん(現在は東京大学大学院薬学系研究科特任助教)らが千葉大学大学院で研究したときの調査です。
日本老年学的評価研究(JAGESプロジェクト)で2010年に実施されたアンケート調査を基に、65歳以上の高齢者1万9920人について、子供時代の生活レベルと高齢期の野菜・果物の摂取関連を解析し、2017年に公表しました。
そうすると、子供の頃の生活レベルが低かった人は、生活レベルが高かった人に比べ、高齢期になって野菜・果物を毎日食べない人の割合が約1.4倍も高かったのです。ただし、同じ高齢者でも、子どものときに学校給食のあった世代の人では野菜・果物の摂取が少ないということはなかったのです。
これは、子どものころの生活レベルが、50年後の高齢期の栄養状態にも影響するというお話です。けれども、学校給食があれば、そういう50年後の影響が緩和されるということですから、いかに学校給食が大事なのかを物語っていますね。
ママ美 いやもう絶対に学校給食を続ける必要性を感じます。
正美 私も全く同じ気持ちです。大事なのは、なぜ学校給食にそのような効果があるかです。柳さんは「家庭に経済的な余裕がないと、子どもたちは野菜を一緒に食べたり、料理したり、栽培したりする楽しさ、健康的な食事の大切さを親から学びにくい側面もある」と述べています。柳さんの言葉を借りると、子ども時代に貧困だと家庭内での食育の良きロールモデルを学ぶ機会を失ってしまうというわけです。
ママ美 そういう話を聞くと、いくらコロナ問題があっても、学校給食を安易に中止していけないんだという気持ちになりますね。

「給食持ち帰り」と「子ども食堂への公的助成」が有用

正美 そうです。そこで、柳さんからのすばらしい提言があります。今後、コロナで学校給食がなくなる場合に備え、「学校給食が持ち帰り弁当になるといいなあ」という提案です。
ママ美 すばらしいアイデアですね。
正美 本当にそうですね。もちろん弁持ち帰り弁当となると食中毒の防止など衛生管理に配慮する必要は出てきますが、給食関係者が知恵を絞れば、クリアできるはずです。
今年は夏休みの期間は短くなりますが、7月下旬からの授業時間はいつもより短くなり、給食がないという自治体もあるようです。午前中の授業を終えて、給食を食べずに児童たちが帰宅するわけです。これは絶対によくありません。給食を食べてから下校すればよいのです。
そして、もうひとつ柳さんの提案ですが、学校給食の代わりになる地域の「子ども食堂」への公的助成を実施してほしいとの提言です。これもナイスアイデアですね。この提案に共感する人はぜひ、地域で「たとえ学校は休みになっても、学校給食だけは続け、持ち帰り弁当にしましょう」という運動をやってほしいですね。そうなれば、学校給食に食材を納めている事業者の救済にもなります。
ママ美 どこかの首長さんに、柳さんの提案を届けたい気持ちです。
正美 同感です。給食を食べながら、栄養の先生が栄養の話や給食を作っている人への思いを語ったりすれば、子どもなりに連帯感も生まれ、素敵な時間になりますね。そんな光景が生まれるのを柳さんは夢見ているようです。
ママ美 きょうはすばらしい話が聞けました。給食を見る目が変わりました。首長さんに「コロナでもぜひ給食を続けて」と言いたいです。

きょうのレッスンは、学校給食は、子供たちの栄養格差を縮小させる効果があるということをしっかりと心に刻むことです。そして、給食を安易に中止させるのではなく、持ち帰り弁当にするとか、給食を活用する知恵を絞り出すことが大事だということを覚えておきたいですね。