第60回 福島のトリチウム水問題。動画で語る3つのポイント

こんにちは、小島正美です。今回でようやく60回目を迎えます。それもあって、今回は特別編をお届けします。自己宣伝になってしまいますが、つい最近、私が編著で「みんなで考えるトリチウム水問題~風評と誤解の解決策」(エネルギーフォーラム・1200円+税)を出版しました。執筆者は読売、朝日の現役記者をはじめ、フリーのジャーナリスト、リスクコミュニケーションの専門家など総勢9人です。副題に「風評と誤解への解決策」とあるように、この問題の構図を分かりやすく解説しただけでなく、風評被害を防ぐための策やコミュニケーション術なども盛り込んだテキストブック型の本です。

東京電力福島第一発電所の敷地内に増え続ける1000基余りのタンクには、トリチウムをはじめ各種放射性物質が含まれています。今年4月、政府は海洋放出を決めましたが、1年や2年で終わるのではなく、30年近くもの間、放出され続けます。今はコロナ禍もあって、大勢が集結する反対運動はできにくい状況ですが、いずれ大きな反対運動も出てくることが予想されます。

この海洋放出は、原子力発電に賛成、反対にかかわらず、避けて通れない問題です。廃炉作業をスムーズに進めるためにも、このままタンクを増やし続けて、放置することは許されません。ならば、まずは国民の理解を得ることが海洋放出の成功の大前提となります。そういう現実的な解決策を模索する観点から、9人がそれぞれの思いや解決策を書いています。

1分でわかる4本の動画

本を読んでもらうのが一番うれしいのですが、本を少しでも多くの方に手に取ってもらえるよう出版社の要請もあって、4本の動画を作りました。人様にお見せするほどのキャラクターではありませんので、抵抗はあったのですが、頼まれたら断れない性格なので引き受けました。動画は、以下から見ることができます。

「みんなで考える トリチウム問題」①
◆ALPS処理水と処理途上水の比率を常に公表する◆
https://youtu.be/_fFzGuJeGUw

「みんなで考える トリチウム問題」②
◆海外の数値と比べ、福島の数値をビジュアル化する◆
https://youtu.be/Vjs8wSZnaMk

 

「みんなで考える トリチウム問題」③
◆福島だけの問題にしない◆
https://youtu.be/WreiSMYVfQk

「みんなで考える トリチウム問題」④
◆9人の著者がトリチウム問題のミカタを1冊の本に凝縮◆
https://youtu.be/3WwnNPbACfg

どんな問題でも、長々としゃべっていては、だれも聞いてくれません。政治家であれ、行政官であれ、事の本質をズバッと伝えるためには「1分でわかりやすく話す」必要があります。トリチウム水の問題の構図がすぐにわかるように、3つのポイントに分けて、話を構成しました。その3つは以下のとおりです。

  • 約1000基あるタンクのうち、海へ流してもよいタンクは3割しかなく、残りの7割のタンクは62種類の放射性物質が放出基準以上に含まれ、これから浄化処理する必要があります。その浄化処理過程が常に国民に「見える」ようにすることが重要です。
  • 国内外の原子力発電所では、ずっと以前からトリチウムを海や大気に放出しています。トリチウム自体は原発事故で初めて発生した物質ではありません。韓国や中国は日本の海洋放出を批判していますが、自身の国でも日本以上にトリチウムを放出していることをもっと知らせていくことが必要です。
  • 海洋放出される際のトリチウムの濃度は、国際基準や世界保健機関(WHO)の飲料水基準よりも、さらに低い基準で放出されます。もともとトリチウムは自然界で大量に発生していて、川や飲み水、人の体にも微量ながら含まれています。飲料水の基準よりも低い濃度で放出するのだから、人体や環境への悪影響はありません。

主なポイントは、この3つですが、私を含め、幾人かの執筆者は風評被害を抑えるために、海洋放出水の「持ち帰りシェア運動」も提唱しています。
福島のタンク水だけが特別なわけではないという事実を、国際機関と連携しながら、伝えていけば、国民の理解は得られるのではないかと考えています。
それでは、動画を見ていただければうれしいです。