第47回 緊急続報!大学入学共通テスト・英語の人工甘味料問題 ~あの「赤本」に注釈が入った

こんにちは、小島正美です。今回は、大学入学共通テストの英語の問題で、人工甘味料(もしくは低カロリー甘味料)が危険かのような記述がされて波紋呼んだ、という第41回の記事(https://foodnews.online/2021/05/16/post-390/)の緊急続報です。共通テストの載った「赤本」(教学社)が出版されたのですが、この問題の解答部分に、出版した教学社編集部が注釈を付けました

ママ美 「赤本」って、入試問題の過去問が載っている、あの赤本ですよね。どんな注釈が付いたんですか。

正美 問題となった第6問Bの回答の末尾に、「なお、本出題については、日本食品添加物協会が見解を発表している(同協会のウェブサイト「協会はこう考えます」にアップされている)。(2021年3月現在)」と付したのです。

ママ美 「日本食品添加物協会は、この内容に反対の見解を示している」などと明確には書かれていないので、受験生が、「これはなんだ?」と不思議に思いそうですね。とは言え、この注釈を読んだ受験生が、日本食品添加物協会のウェブサイトにアクセスしてくれるとよいですね。

正美さんは、この英文が、過去問として、これからずっと受験生に読み継がれていくことを心配し、共同代表を務めるメディアチェック集団の「食品安全情報ネットワーク」が大学入試センターに訂正を求めていたくらいですから、少しはホッとしたのではありませんか?

正美 たしかに一定の成果はありましたね。

第41回の記事で詳しく指摘しましたが、問題の英文には「人工甘味料(低カロリー甘味料)の中には、がんを引き起こす疑いや、脳の発達に影響を及ぼすものがある」と書かれています。読んだ学生たちは、文中に出てきた甘味料が脳に影響すると解釈したはずです。

報道では、入試センターは「脳に影響するとした甘味料は、文中には出てこない甘味料だ」と、巧妙な解釈を披露していますが、受験生は、そんな解釈をしなければならないとは、夢にも思っていないはずですから。

ただ、今回、注釈が入ったことで「えっ、どういう意味かな」と受験生が疑問を抱くことが予想されます。その意味では、日本食品添加物協会や私たちの訂正要求は、国を動かすことはできませんでしたが、試験問題を出版する出版会社の心には響いたのだと思います。

食品添加物のメリットを説く側によるアクションの意義は大きい

ママ美 第45回の記事「放射線ジャガイモ騒動が示す バイヤーの壁が作られる、恐るべき理由」(https://foodnews.online/2021/05/31/post-410/)で、正美さんは、放射線ジャガイモやゲノム編集トマトに「反対する人たち」の行動力が、「賛成する人たち」より圧倒的に勝っている、と書いていました。今度は逆の現象でしょうか。

正美 逆というか、行動力で勝っているほうが世の中を制すということでしょうか。

食品添加物の世界では、どちらかといえば、不安を感じる消費者が多いですね。その消費者の不安に寄り沿って、「わが社は無添加の食品をご用意します」と動くのはある意味で簡単です。

一方、「食品添加物は適正に使えば、食中毒を防いだり、食品ロスを減らしたりするメリットがあります。わが社は今後とも適正に食品添加物を使い続けますので、ご理解をお願いします」と長々と説明しても、なかなか理解は得られにくい状況が続いています。

そういう観点でいうと、食品添加物のメリットを説く側のアクションが出版会社を動かした意義は大きいと思います。メディアチェック集団の「食品安全情報ネットワーク」が素早く「共通テストの問題はおかしい」と声をあげたのもアクションのひとつなので、やはりアクションを起こすことがメディアを動かす要因だとつくづく感じます。

ママ美 賛成、反対、また少数派、多数派のどちら側にせよ、メディアを巻き込みながらアクションを起こすことが世の中を動かしていくということですね。

正美 そうです。座して黙っていても、自分の思う方向に世の中が変わってくれたら、どんなに楽かと思います。しかし、世の中はそう甘くありません。世の中を変えたいと思ったら、自らが動くしかないのです。

次回は、ちょっと変わった視点(記者や専門家の主張ではなく、推定される行動)から週刊現代のトンデモ記事を取り上げます。