第23回 絶大なパワーを持つ「藻類」
未来の食とエネルギーの救世主!

2020年10月22日

こんにちは、小島正美です。今回は「昆虫食」に続き、未来の食料やエネルギーとして注目されつつある「藻類」についてお話をしましょう。最後にとっておきのセミナー紹介もありますよ。

ママ美 いきなり藻類ですか。ワカメや昆布のことでしょうか?

正美 たしかにワカメや昆布、ノリも藻類ですが、実は、あんなに大きな形をした藻類は珍しく、ほとんどの藻類は、肉眼では見えないほど小さな生き物です。
正確な定義は難しいようですが、一般的にいうと、光と二酸化炭素で光合成を行う生物です。ただし、コケやシダ、種子植物は除いたものです。水中をはじめ、地球上のあらゆる環境に生息しています。窒素やリンを吸収するため、水質浄化に役立つ生物として覚えている人もいるでしょうね。

ママ美 どんな形の藻類がいるのでしょうか。

正美 丸かったり、棒状だったり、花みたいだったりと、形はさまざまです。健康食品でよく知られるクロレラも藻類です。他にスピルリナやユーグレナも有名ですね。

ママ美 クロレラやユーグレナは、聞いたことがあります。

正美 最近、藻類の持つ、潜在的な栄養分に注目が集まっているのです。このブログの第20回で見た「昆虫食」や、大豆などで作る「代替肉」などと並ぶ扱いを受けているんですよ。

第20回 昆虫食ブームを考える(前編) なぜいま、昆虫食? そのメリットと将来をさぐる
https://foodnews.online/2020/09/29/post-182/

ママ美 そこまでとは、知りませんでした。

正美 実は私はいまから26年前に「藻類」に注目していました。「滅びゆく海の森」というタイトルの本を書いたのですが、この「海の森」というのが、ワカメやコンブ、ホンダワラなどの藻類を指しているのです。
日本列島を囲む海の底には、広大な藻類の森があります。もし海面が100メートル下がって、沿岸が陸地のようになれば、きれいな緑や赤の海の森が見えるはずです。その海の森が滅びつつある(漁業関係者の間では「磯焼け」という言い方もします)状況を、川や森林との関係も説きつつ、レポートした本でした。ただ、全く売れず、すぐに絶版となってしまいました。
そんな過去があるので、藻類への思い入れは強いんです。

ママ美 滅びゆく藻類……なかなか渋いテーマですね。正美さんに、そんな個人ヒストリーがあったとは全く知りませんでした。

パワフルな藻類の世界

正美 というわけで、ここに来てようやく、藻類が注目され始めてうれしいのです。
なんと、藻類から石油をつくる技術も開発されています。筑波大学の渡邉信・特命教授らの研究では、いろんな種類の藻類を固めて、高温高圧処理でぎゅっとしぼりだすようにして石油を抽出する研究をやっています。技術的にはすでに完成していますが、野外でどれくらい効率的に生産できるかが今後の課題です。耕作放棄地に水をためて藻類を育てれば、陸地で石油が大量に生産される時代がやってくるわけです。

ママ美 藻類から石油? なんだか空想のお話を聞いているようです。

正美 石油は炭化水素のひとつです。一般に藻類は健康によい脂肪酸などの油脂(炭化水素も含む)をつくる性質をもっていますが、ボトリオコッカスといった特定の藻類はその炭化水素の油(石油系オイル)をつくるのです。
ママ美さんもニュースで聞いたことがあると思いますが、バイオ企業として知られる株式会社「ユーグレナ」は、藻の一種のミドリムシ(学名はユーグレナ)を原料にしてバイオ燃料や化粧品をつくっていますね。そのバイオ燃料は飛行機や車の燃料になるのです。食料としての生産量で見ても、大豆や小麦などの穀物よりも10倍以上も高いです。

ママ美 藻類って、大変なパワーがあるんですね。

正美 石油のような化石燃料は、もとをたどれば、35億年前に地球上に生まれた藻類が形を変えたものです。健康によいとされる魚の油(ドコサヘキサエン酸のDHAなど)も、もともとは藻類が作り出したものです。DHAも油の一種ですね。だから健康食品の材料にもなるのです。それだけでなく、藻類にはタンパク質もたくさん含まれているので食べ物にもなります

ママ美 聞いていると夢のような生き物に見えてきました。

正美 個人的には地球の環境を救う究極の生き物だと思っています。農業に向かない砂漠のような荒れた土地でも、通常の作物(大豆やトウモロコシなど)よりもはるかに高い生産性でオイルや食べ物をつくってくれるのですから、その世界を想像するだけでも心がワクワクしてきますね。

米国では「藻類農業」誕生

ママ美 藻類がやがて農業の一形態になるような夢物語ですね。

正美 いやいや、もう夢物語ではありません。アメリカでは2018年12月、藻類を農作物とみなす新しい農業法が成立しているんです。「藻類農業」という言葉がもう生まれていて、アメリカでは藻類は作物保険の対象となり、藻類の収量が不作の場合は補償も受けられるようになります
こうした藻類の最新情報を教えてくれるのが、「Modia」(藻ディア)というウエブサイトです。バイオベンチャー企業群の「ちとせグループ」が運営する藻類ビジネスの情報サイトです。ここで述べた米国の藻類農業の話は、このサイトからの情報です。ぜひ読んでみてください。きっと驚きの連続だと思います。
https://modia.chitose-bio.com/about_modia/

ママ美 そんなサイトがあるなんて初めて知りました。

10月29日(木)に「藻類セミナー」

正美 最後にとっておきの情報です。
その「ちとせグループ」で藻ディアのサイトを立ち上げた出口悠さん(京都大学大学院修士課程修了・「ちとせグループ」コミュニケーションデザイナー)を招いて、10月29日(木)19時~20時30分、東京都千代田区の日比谷図書文化館で藻類のパワーを学ぶセミナーをやります(食生活ジャーナリストの会主催・案内は末尾参照)。会場に来てもいいし、オンライン(ZOOM)で聞くこともできます。
もうひとつ、車部品の大手メーカー「デンソー」は藻類から化粧品をつくっていて、「モイーナ」というブランド名ですでに販売しています。これからはこういう動きが加速していきそうです。10年、20年後に藻類がどんなことを成し遂げているのか、想像するだけでも胸が熱くなります。

ママ美 今回は、未来に希望が持てそうな気分になりました。29日のセミナーは私も参加します。

正美 昆虫食、藻類とくれば、次は今、最も注目されている代替肉・培養肉に触れないわけにはいきません。このブログでも近々、代替肉・培養肉の最新情報をお届けしますのでお楽しみに。
10月29日のセミナー参加希望者は、「食生活ジャーナリストの会」のサイト http://www.jfj-net.com/11309 から申し込むか、以下のフォームから申し込んでください。学生は無料。一般参加者の参加費はオンラインが1000円。会場での参加は2000円です。
参加申込みのフォームはこちらです  https://forms.gle/TC9woCJepkSFMkY9A