第20回 昆虫食ブームを考える(前編) なぜいま、昆虫食? そのメリットと将来をさぐる

2021年2月12日

こんにちは、小島正美です。きょうから2回にわたり、食料危機の解決策として近年、注目を集めている「昆虫食」について、有望な食材として定着するかを考えます
なかでもコオロギは、味の良さや育てやすさから商品化がすすんでおり、食べやすいスナック菓子も登場。そこで今回は、コオロギせんべいを食べながら議論しましょう。

無印良品のコオロギせんべいの味は…

ママ美 あら、正美さん。おいしそうなおせんべいを食べていますね。私もいただいていいですか。

正美 今年5月に「無印良品」が売り出した新製品ですよ。ぜひ食べてみてください。

ママ美 もぐもぐ・・・。パリッとしていて香ばしく、さっぱりとした塩味でおいしいですね。これはエビせんべいですか?

正美 コオロギせんべいですよ。

ママ美 え! コオロギって、草むらなどにいる、昆虫のコオロギですか?

正美 もちろん、そうですよ。おいしそうに食べていましたね。

ママ美 エビせんべいと似ていて、まさかコオロギだとは思いませんでした。

無印良品のコオロギせんべい

正美 白いせんべいの表面に、茶色のツブツブがありますが、これがコオロギをすりつぶしたパウダーです。
原材料表示を見ると、重量の多い順に、「バレイショでんぷん」「コーンスターチ」とあり、3番目に「食用コオロギパウダー」が出てきます。
東南アジアなど熱帯地域に生息する品種「フタホシコオロギ」約30匹分が、1袋に含まれているそうです。

ママ美 1袋に30匹分も!

正美 徳島大学の研究者たちが養殖したコオロギの粉末を使用し、愛知県内の食品メーカーに委託して生産したそうです。1袋55グラム入りで、190円ですから価格的には買いやすいですね。
私は小さいころ、イナゴや蜂の子を食べていたので昆虫を食べることに抵抗感はありませんが、ママ美さんはどうですか。

ママ美 私は昆虫を食べたことがなかったので、せんべいの「えび満月」のように、元の姿形が見えるタイプだったら抵抗があるかもしれません。でも、このせんべいのようにパウダーになっていて、姿形が分からなければ、抵抗はないですね。お友だちとの話のタネになりそうだわ。
それにしてもなぜわざわざ、昆虫を食品として売っているのかしら。話題作り、というわけでもないですよね?

メリット1:エサ・水が少なくてすむ

正美 「コオロギせんべい」の商品パッケージを見てください。「これからの地球のことを考えて、せんべいを作りました」とありますね。
日本は少子化に悩んでいますが、地球規模で見ると人口は増加中。2050年には100億人に達しそうな勢いなのです。となれば、心配されるのが食料の確保です。養殖のコオロギは、貴重なたんぱく源となると考えられています。

ママ美 そうなんですか。でも、あんな小さな虫を育てるより、大きな牛を育てるほうが、1頭でたくさんお肉が取れて効率的なのではないかしら。

正美 いいえ、それは逆なんです。
コロオギパウダーのメーカーが、たんぱく質1キロを生産するために、エサがどれだけ必要かを公表しています。生鮮品と乾燥品で単純比較はしにくいものの、コオロギでは1.7キロで済むのに対し、鶏は2.5キロ、豚は5キロ、牛になると10キロも必要なんです。

ママ美 コオロギは、ずいぶん効率が良いんですね。

正美 水の節約効果も大きいですよ。
たんぱく質1キロを生産するために必要な水は、コオロギでは4リットルで済みますが、鶏は2300リットル、豚は3500リットル、牛は2万2000リットルもが必要です。

ママ美 家畜の飼育って、コオロギに比べて、ケタ外れの水が必要なんですね。

メリット2:栄養価が高い

正美 しかも、コオロギは栄養価が高いんです。良品計画によると、コオロギ100グラムあたりのたんぱく質量は60グラムもあります。鶏23グラム、豚22グラム、牛21グラムですから、ずいぶん多いわけです。
こうしたメリットがあることから、国連食糧農業機関(FAO)は2013年、「貴重なたんぱく源」として食用昆虫の積極的な利用を推奨しました。これで、昆虫食が俄然、注目を集めることになりました。

ママ美 メリットはよく分かりました。昆虫食はこれから、広まっていくのでしょうか。

正美 次回は、それを探ってみましょう。私はいま各地で増えている自動販売機で、昆虫食のスナック菓子も買ってみましたので、そのお話もお楽しみに。