第73回 ついにゲノム編集トマトが機能性表示食品として誕生!
こんにちは、小島正美です。忙しくて、しばらく出稿が滞っていましたが、朗報が飛び込んできました。世界で初めて市場で流通していたゲノム編集トマトの「シシリアンルージュハイギャバトマト」が、ついに消費者庁所管の機能性表示食品として受理(11月30日)されました。
日本は、ゲノム編集食品の開発では世界の最先端を走っています。ゲノム編集トマトはその先兵といえますが、機能性表示食品として、健康効果がはっきりと表示できるようになったため、いよいよゲノム編集食品の動向に目が離せなくなりました。
4つの機能性表示が可能に
「シシリアンルージュハイギャバトマト」は、血圧上昇を抑制する成分のガンマアミノ酪酸(GABA=ギャバ)を豊富に含むトマトです。狙った遺伝子を効率よく書き換えるゲノム編集技術によって生まれたトマトです。江面浩・筑波大学教授らが起こしたベンチャー企業「サナテックシード株式会社」(東京)がパイオニアエコサイエンス株式会社とともに開発し、2020年12月、日本で初めて流通と販売を国へ届け出ていました。
今回の機能性表示食品の受理は、「サナテックシード株式会社」が12月2日、同社のホームページで公表しました。
機能性表示食品の詳細を紹介する消費者庁のホームページ(届出番号H617)を見て、まず驚いたのは、このゲノム編集トマトの機能性の多さです。なんと健康効果ともいえる機能性が4つもあるのです。「ストレス・緊張の緩和」「睡眠の質の向上」「血圧のサポート」「肌の弾力」の4つです。どれも現代人を悩ませるものばかりですね。
これを摂取することで健康効果が期待されると想定される主な対象者は「血圧が高めの人、仕事や勉強による一時的な精神的ストレスをかかえた人、睡眠の質、肌の乾燥が気になる日本人男女(疾病に罹患している者、未成年、妊産婦・授乳婦を除く)」とあります。
私はこれまで、「シシリアンルージュハイギャバトマト」の機能性として、血圧上昇の抑制やリラックス効果を書いてきましたが、「睡眠の質」や「肌の弾力」という機能性も表示できるようになったわけです。
トマト市場の拡大も期待できるか
さらに、消費者庁のホームページを読み、このトマトの市場での将来性に注目すべき点を見出しました。ホームページは以下のように紹介しています。
「本品にはGABAが含まれます。GABAを12.3㎎摂取すると血圧が高めの方の血圧を下げる機能が、28㎎摂取すると仕事や勉強による一時的な精神的ストレスを緩和する機能が、100㎎摂取すると睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)の向上に役立つ機能、及び肌の乾燥が気になる方の肌の弾力を維持し、肌の健康を守るのを助ける機能があることが報告されています。本品13g(1個)で機能性が報告されている1日あたりの血圧が高めの方への機能性関与成分、30g(2個)で一時的な精神的ストレスへの機能性関与成分、106g(5-7個)で睡眠の質と肌の健康を守るのを助ける機能性関与成分を摂取できます」。
このトマトは中玉タイプ(写真)なので、一度に1~2個は訳なく食べられます。私も当初は、1日に1~2個のトマトを食べれば、血圧上昇の抑制やリラックス効果が期待できるというふうに考えていましたが、1日に1~2個ではたくさん買わなくても済んでしまいます。
しかし、5~7個の摂取で睡眠の質と肌の健康を守るのを助けるという表示から期待できるのは、1日に5~7個を食べる人が出てくるという点です。みなが1日にたくさん食べれば、このトマトの市場拡大が期待できます。これがヒットすれば、ゲノム編集トマトが産業として生まれても不思議ではありません。
世界へ飛躍できるか
トマトは世界中で食べられている野菜です。食材としてみれば、レストランなど業務用にも世界中で使われています。日本発のゲノム編集トマトが日本の市場で一定の支持と認知を得れば、世界の市場へ飛躍するのも夢ではありません。日本は現在、電気自動車やIT産業、バイオ燃料などさまざまな分野でテクノロジーの遅れを見せています。資源のない日本が豊かな生活を支えていけるかどうかは、日本独自の技術力で覇権を握る産業分野がどれだけ育っていくかにかかっています。日本発のゲノム編集技術がその一端を担うことを期待したいですね。
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