第68回 「遺伝子組み換えナタネは港で繁殖せず」――安全な話は報道されず

こんにちは、小島正美です。よく「危ない話はニュースになるが、安全な話はニュースにならず」と言われますね。確かにその通りです。農林水産省は7月26日、日本に輸入される遺伝子組み換えセイヨウナタネやダイズの実態調査を公表しました。ですが、どの新聞も報じていません。大事な情報でも、安全だと無視されてしまうのは悲しいですね。

農水省は2006年から、組み換えナタネやダイズが輸入される全国の港で組み換え作物の生育状況や近縁種との交雑の有無を調べています。

これに対し、遺伝子組み換え作物に反対してきた市民グループは「組み換えナタネの種子が輸入港で運搬中にこぼれて繁殖し、近縁のカラシナと交雑すると、生態系に悪影響を及ぼす」と反対してきました。

確かに組み換えナタネが港を起点にどんどん繁殖し、在来のナタネを駆逐してしまえば、生態系によいとはいえません。

生育はあっても繁殖せず

実態はどうでしょうか。7月26日に公表された令和2年度と令和3年度の調査結果がとても参考になります。組み換えナタネにしぼると、農水省は令和2年度に7港、令和3年度は8港で調べました。その結果、令和2年度では7港のうち6港で81群落、計131個体、令和3年度では8港すべてで83群落、計106個体の組み換えナタネが生育していました。

この調査でお分かりのように、港では、こぼれ落ちた組み換えナタネの種子が生育していることが分かります。問題はその先です。どんどん繁殖して広がっていくかどうかです。そして、近縁の在来カラシナと交雑して、その交雑体が拡大していくかどうかです。

調査の結果によると、両年度とも組み換えナタネの生育範囲が拡大している事実はなく、また両年度とも交雑は見られませんでした。ちなみに組み換えナタネは、除草剤のグリホサートに耐性を持つもの、除草剤のグルホシネートに耐性を持つもの、そして両方の同除草剤に耐性を持つものがありました。

一方、ダイズの調査でも、組み換えダイズが拡大している事実はなく、近縁のツルマメとの交雑は見られませんでした。

ナタネを輸入して70年

実は、こうした結果はある程度予想されたことと言えます。ナタネの繁殖力や交雑力は組み換え体になったからといって、強くなるわけではないからです。組み換えナタネはあくまで特定の除草剤に耐性を持つだけで、その他の形質は従来のままです。

日本はすでに1950年代から、カナダから大量のセイヨウナタネを輸入しています。組み換えナタネが登場したのは1996年ですから、組み換えナタネが登場する以前の約40年間、ナタネの種子は港にこぼれて生育していたはずです。しかし、その40年間に輸入ナタネがどんどん繁殖面積を広げていったわけではありません。つまり、輸入ナタネが広がらないことはすでに予想されていたとも言えるのです。

ネットをのぞくと、いまも「港で組み換えナタネが多く見つかる。どんどん広がってしまう危険性があります」という危険論が見られます。これが杞憂なのは、今度の調査結果や過去70年間の軌跡を見れば、明らかです。新聞記者はぜひ、安全な情報も記事にしてほしいですね。危険だと思っている人や何も知らない人に対しては、安全な情報も役に立つ情報ですから。